Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究はヘムの分解に伴って生じる様々な生理反応の解明を目的として行なった。ヘムの代謝はヘムオキシゲナーゼ(HO)によるポルフィリン環の開裂によって始まり、この反応でビリベルジン、CO、鉄が生じる。生じたCOは、哺乳類では様々な生理反応のシグナル伝達物質として働くと示唆されている。このような生理反応の一つとして、NPAS2による体内時計の制御が知られている。NPAS2はヘムを二分子含む蛋白質で、ヘム鉄にCOが結合することによって、その会合状態を変化させ、BMAL1と相互作用することによって転写因子として機能する。ヘム結合ドメインA、Bおよびその両者をもつフラグメントを大腸菌内で大量発現させる系を用いて、試料を精製し、結晶化を試みたが、現在まで結晶解析に適した結晶を得ることには成功していない。NPAS2の関与する系以外にもCOは細胞増殖、抗炎症、抗アポトーシスといった細胞を保護する反応のシグナルとして働くことが示唆されている。これらはHOの特異的阻害剤が抗癌剤として使用できる可能性を示している。昨年、イミダゾール-ジオキソレン化合物が従来のHO阻害剤より特異性の高い阻害剤として働くことが報告された。今年度、私はこの阻害剤とヘム-HO複合体の三者複合体の立体構造を明らかにした。本構造を基に、より特異性の高い阻害剤が開発されることが期待される。一方で、光合成生物ではヘムの分解によって生じたビリベルジンが、フェレドキシン依存性ビリン還元酵素によって還元され、様々な光合成色素や光受容色素が合成される。今年度は、昨年度明らかにしたフェレドキシン依存性ビリン還元酵素(PcyA)と基質であるビリベルジンの複合体構造をさらに発展させ、基質非結合型の立体構造を明らかにした。基質結合前後の構造を比較することにより、PcyAにおける構造変化を伴う基質認識について明らかにした。
All 2007 2006 2005
All Journal Article (6 results) Book (1 results)
Biochemistry 46・7
Pages: 1860-1867
FEBS Letters 580・16
Pages: 3823-3826
日本結晶学会誌 48・4
Pages: 283-289
10019293665
Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 103・1
Pages: 27-32
Biochemistry 44・11
Pages: 4257-4266
生化学 77・7
Pages: 634-638