Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
本研究課題は,覚醒中とレム睡眠中の眼球運動の発生に関与する脳活動を明らかにすることを目的とした。そのため,健常者を対象として,覚醒中のサッカードとレム睡眠中の急速眼球運動に関連する脳電位を記録した。本研究課題では,次の3点を明らかにした。(1)覚醒中のサッカードに約150ms先行して,サッカード前陽性電位が出現する。しかし,レム睡眠中の急速眼球運動前には,サッカード前陽性電位は出現しなかった。サッカード前陽性電位は,サッカードの計画過程を反映する運動準備電位である。このことから,レム睡眠中の急速眼球運動前には,覚醒中のサッカードの計画過程が欠落していることが示唆された。(2)また,レム睡眠中の急速眼球運動に先行して緩徐陰性脳電位(pre-rapid-eye-movement negativity:PRN)が出現することを発見した。そして,PRNの発生源をsLORETA(Pascual-Marqui,2002)を用いて検討した。その結果,急速眼球運動前150msから20msには,情動や感情に関与すると考えられている腹内側前頭前皮質,前帯状回,島,鉤や,記憶に関与する海馬傍回に電流源が推定された。このことから,レム睡眠中の急速眼球運動に先行して,情動や記憶に関与する脳活動が生じていることが示唆された。ネコでは,情動に関与する扁桃体を刺激すると,急速眼球運動数が増加することが指摘されている(Calvo et. al.,1987)。ヒトでも,急速眼球運動前に出現する情動に関与する脳活動は,急速眼球運動の発生に影響を及ぼしている可能性が示唆される。(3)急速眼球運動後には,急速眼球運動前と比較して,ガンマ帯域脳波活動が増大することを明らかにした。ガンマ帯域脳波は認知課題など,脳の活動性が高い状態のときに出現する。このことから,急速眼球運動後には急速眼球運動前と比較して脳の活動性が高まっていることが推測される。以上の結果から,覚醒中とレム睡眠中の眼球運動の発生機序は異なっており,レム睡眠中は情動に関与する脳活動が急速眼球運動の発生を促進する可能性が示唆される。そして,急速眼球運動の発生後には,脳の活動性が高まることが示唆される。
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