Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
近年在宅診療に携わっている歯科医療の現場で、歯牙欠損部位に補綴処置を施し咀嚼機能を回復させると、QOLの向上や痴呆軽減がしばしば惹起されることが注目されている。本研究では、高齢ボランティアの高次脳機能が咬合咀嚼刺激により改善することを機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて神経科学的に検討した。 作業記憶課題遂行時における脳活動に対する、咬合咀嚼刺激に対する影響をfMRIを用いて検討した結果、外側前頭前野において作業記憶課題の遂行と関連してBOLD信号の増加が認められた。さらに、高齢者においても遂行が可能で、注意ネットワークの検出感度を高くした注意課題を作成し、fMRIを行った結果、咀嚼後に注意課題の実行速度が向上するとともに、注意に関連する脳部位における活動が上昇することが認められた。 また、人工的に咬合不全処置を施した被験者における咬合咀嚼時の脳活動を観察した結果、前帯状回および扁桃体のBOLD信号の上昇が認められた。さらにこの信号上昇は咬合不全状態に対する不快度と相関していることがわかった。加えて、咬合咀嚼不全により義歯調整あるいはインプラント義歯の装着が必要な高齢ボランティアにおける、咬合咀嚼課題の脳活動への影響を調べた結果、義歯調整後に扁桃体の活動が低下している例が認められた。 以上のことから、本研究により咬合咀嚼刺激が注意課題の実行速度を向上させるとともに、作業記憶課題の処理に影響を与えることがfMRIにより観察され、さらに、高齢者における咬合咀嚼不全が扁桃体に与える影響が、義歯調整によって除去できることが示唆された。不快条件下における扁桃体の活動が、海馬活動を阻害することが報告されている(Hirano Y. et al.,2006,Brain and Cognition)ことから、咬合咀嚼刺激による知的機能回復は高齢者においても存在することが示唆された。
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