Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2006: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
本年度の研究実績は大きく2種類の分野に分けられる.ひとつは,18世紀ドイツ啓蒙期の科学アカデミーにおいて成立した「弾道学」の成立の解明であり,もう一つはと啓蒙期の科学書の構成・普及の実体調査である. まず,前者の研究のために,イギリスの総合技術者であったロビンズの著した『弾道学新原理』とスイスの数学者オイラーによる独語訳を分析した.とりわけこの翻訳は内容的には原著とまったく異質で,ロビンズ測定の超音速ならびに亜音速の弾頭の初速度から弾頭の軌道や到達距離の決定を解析力学的手法によって再構築しており,大陸的解析学の影響を強く受けた応用力学的著作であることが理解された.また,本研究では,この著作の構成のみならず,他言語への翻訳状況など,伝播の度合いについても調査を行った.その結果,ロビンズ版やオイラー版のみならず,仏国立図書館所蔵の貴重な仏語版を入手し,オイラー版が大きな成功を収めた以降でも,ニュートンの形式による比較的古い形式が仏国内に紹介されたことが分かった.さらに,この出版はパリ以外でなされており,18世紀科学史の専門家P・ブレ氏の扱う非パリ圏における啓蒙期科学の展開の一つとして新時代の啓蒙期科学研究には重要な視点となった. つづいて,啓蒙期の科学書について,オイラー『ドイツ王女への手紙』の構成・普及について調査した.結果,高等数学を排した記述に,穏当な粒子論哲学者としての側面を読み取り,これがヴォルテール等の自由主義者の理性崇拝的科学観とは正反対であることを確認した.これまで先行研究をあまりもたない著作ではあったが,ヨーロッパ各国版へ計111もの増版を重ね普及したことや,カントやファラデーなどの次代の哲学者・科学者に影響を与えたという事実は重要であり,日本科学史学会シンポジウムや東京工業大学の公開ゼミナール等で発表した.
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