Research Abstract |
音場のあるがままの伝送を目的に研究を進めている。キルヒホッフの積分公式によれば境界面の音圧と粒子速度を一致させることにより3次元音場の再生が可能であるが制御点が膨大になるという問題があった。 そこで自由な形状の構成が可能であるコンデンサスピーカの固定電極を分割して1bit信号でマトリックス駆動する収録・再生システムを提案し,限られた制御点数でのシステムの実用性を明らかにした。駆動系の高速1bit信号処理にランレングスリミテッド符号を導入し,信号雑音比を悪化させることなく最小反転間隔を確保できる手法を明らかにし,コンデンサスピーカの駆動の際の高電圧スイッチングを現実のFETで行うことが可能となった。これら成果を6月の電気音響研究会にて発表した。 膨大な制御点をそれぞれ独立に結線し制御するのではなく光や電磁波を用いた非結線走査型駆動を可能とするトランスデューサの実現を目的にこれまであまり注目されることのなかった相変化を利用したスピーカを提案し,塩化ナトリウム水溶液を用いた実験により実現可能であることを示した。それらを2月の音響学会誌にて発表した。 多数の制御点を必要とする境界面制御ではなく音源そのものを高精細に記録・再生する手法としてそれぞれの結線を必要としない小型高精度収録機を用い音源付近で収録し同一配置で再生するシステムを提案した。半導体メモリおよび高速1bit信号処理を用いて演者に影響を与えない大きさで各収録機を試作し実用性を示した。提案するシステムを用いて無形文化財の収録活動を行い,9月にパシフィコ横浜にて開催されたA&Vフェスタにおいてデモ及び発表を行った。また超広帯域収録システムとあわせて11月に早稲田大学にて行われた国際シンポジウム1bitフォーラム2005において発表した。 今後は境界面制御と音源収録の併用による3次元音場の伝送システムの確立を目指す。
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