Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間瀬 肇 京都大学, 工学部, 助教授 (30127138)
水谷 法美 名古屋大学, 工学部, 助教授 (10209760)
角野 昇八 大阪市立大学, 工学部, 助教授 (70047398)
中川 一 京都大学, 防災研究所, 助教授 (80144393)
安田 孝志 岐阜大学, 工学部, 教授 (10093329)
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Research Abstract |
平成6年8月21日,東シナ海の温州付近に上陸した台風17号によって,高潮と洪水の同時氾濫が発生した可能性が大きく,死者は建物の倒壊によって375名,溺死331名の計752名を数え,負傷者は317名に達した.氾濫災害による被災者は135万人に達し,避難を余儀なくされた人は29万人にのぼり,物的被害の主なものだけでも,全壊家屋52,000戸,橋梁の流失186橋,海岸護岸の被害延長259km,河川堤防の破堤746カ所を数えた.現地調査の結果,以下のことが判明した.まず,死者数がなぜこれほど大きかったのかについては,つぎの理由が挙げられる.1)台風の規模の割に強風が吹いたこと,2)台風の上陸と満潮とが重なって高潮が発生したこと,3)記録的な豪雨であったこと,及び4)気象予報の不信である.とくに4)については,8月7日に温州市付近に上陸が予想されていた台風14号が,予想に反して台湾付近を通過後,進路を北に変えたため,中国気象庁の予報の信頼性に対する住民の期待を裏切ることになった.このため,住民は今回も大丈夫と考えていたと推定された.つぎに,海岸構造物の被害については,石張りの海岸堤防の決壊が至るところで観察された.ただ,高さが海面上2,3mのものが多く,しかも全面に砂浜がなく高潮による潮位上昇と暴浪の越波のために強度が不足して決壊したと考えられる.堤防背後では,農家の2階の窓枠の半ばまで浸水した状況がうかがえる.ただし,海岸堤防の背後にすぐに集落があるのではなく,みかん畑や養魚池が両者の間に設けられている場合が多く,人的な被害はそれほど多くないと推定された.なお,調査当時に波高約1m程度の波による越波状況が観察された.ここでは前浜がなくて堤体に入射波が直接衝突し,反射波となって重複波が形成される様子が観察された.早晩,この海岸堤防は全壊すると言える.
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