Research Abstract |
1.本研究ではRuding委員会報告発表後のEUにおける直接税の調和の問題を、主に報告において残された問題点を中心に検討することを主目的としていた。最大の問題点となるのは、税制の調和という非常に強い権限を必要とする事項と各国の自主性を尊重する「補完性の原則」をどう調和させるかという点と、報告で勧告が見送られた共通の法人税制を模索するという点である。 2.本研究では1の問題点のうち2番目の問題点を検討するためThe Institute for Fiscal StudiesのACEプラン(Institute for Fiscal Studies(1991),Equity for Companies: A Corporation Tax for the 1990s,Commentary No.26,Institute for Fiscal Studies,London.)および米国財務省の包括的企業所得課税(comprehensive business income taxation,CBIT)(U.S.Department of the Treasury(1992),Integration of the Individual and Corporate Tax Systems: Taxing Business Income Once,U.S.Government Printing Office.)を参考にした。報告において問題となった所得税と法人税の統合関係、とくにその国際的側面に留意しながらこの2つの案が共通税制構築に向けての土台となりうるかを検討し、その結果を下記論文としてまとめた。結論としては、2案ともEUにおける共通法人税制の候補には、それぞれが国内における個人の税負担の公平性、国際間における資本輸出の中立性という問題点を持っており直ぐにはなれないが、この点を解決すれば共通法人税制の候補となりうるということを示した。 3.残された課題は上述の問題点の第一の検討である。「補完性の原則」を保ったままでEU域内の経済活動を阻害しないような税制の調整(coordination)の方向をさぐればよいという暫定的な結論の妥当性を現在検討中である。
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