Research Abstract |
透過電子顕微鏡(TEM)を用いて試料の構造を原子レベルで詳細に評価するためには,品質の良いTEM試料を作製することが極めて重要である。従来より電顕試料作製法として用いられるイオン研磨法は,半導体超格子のような複合材料には最適な薄片化法と考えられるが,試料表面にダメ-ジ層やアモルファス層が残留するという問題点もある。これらの層は,高分解能観察する際にはノイズとなり像観察を妨げる。従って,高分解能観察を行うときには,試料表面のダメ-ジ層やアモルファス層をできるだけ薄くしておくことが必要である。本研究では,TEM試料のクリーニング法として次に示す3通りの方法を取り上げ,その有効性を検討した。(1)イオン研磨の後に塩化水素ガスで気相エッチング,(2)イオン研磨の後にアルゴンレーザ照射下で気相エッチング,(3)イオン研磨の後に硫酸系溶液でエッチング。試料としてはInGaP/GaAsを用い,[110]断面方向から像観察した。観察は,加速電圧200kVの電顕で行った。観察の結果,イオン研磨のみの試料は,試料の端部約20nmがアモルファス化しており,また試料表面にはコンタミネーションによると思われる斑点模様が見られた。(1)の処理を行った試料は,試料表面のコンタミネーションやアモルファス層が処理前に比べ減少することが分った。(1)は電顕試料のクリーニング法として有効な方法であると思われる。(2)及び(3)の処理については,アモルファス層がかえって増大した。
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