Research Abstract |
遺伝性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者ではCu,Zu-SOD遺伝子(SOD1)に変異をが報告されているが、日本人の2家系に新しい遺伝子変異を見い出した。しかし、SOD1に変異をもつALSの患者では、赤血球中のSOD活性が低下しているが、それが変異酵素の比活性の低下によるものか、それとも酵素の不安定さを反映した結果なのか明らかではなかった。そこで、この点を明確にするために哺乳動物により近い昆虫細胞にバキュロウイルスベクターを用いて遺伝子導入し、発現されたリコンビナントSODの酵素学的性質を調べた。野生型Cu,Zu-SODをまず発現させたところ、大量のタンパク質の産生が認められたものの活性は検出できなかった。しかし、培地にCuを添加することによって酵素活性の回復が認められた。この産生系では昆虫細胞中の可溶性タンパク質の約1/3がCu,Zu-SODとなるため、産生されたリコンビナント酵素をイオン交換とゲルろ過カラムによって容易に精製できた。同様にして三種類の変異Cu,Zu-SODを発現させ精製したところ、Gly^<41>→Asp、His^<43>→Argはそれぞれ正常の約47%と66%の活性を示し、Gly^<85>→Argでほぼ100%の活性を有していた。さらに精製酵素を用いて、活性低下の原因が酵素の安定性の低下を反映していることを明らかにした。こうしたCu,Zu-SODの活性低下によるO_2の蓄積は、生体におけるFenton反応を加速し、反応性の高いヒドロキシラジカルの産生を促す結果、運動神経の傷害を起こすものと考えられる。
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