Research Abstract |
加齢に伴うヒト舌粘膜上皮細胞動態の変化をGl後期からS期の細胞核に存在する増殖細胞マーカーの増殖細胞核抗原(PCNA)と糖鎖を抗原決定基とする血液型関連抗原で,近年アポトーシス関連抗原として注目されているLewis^Y(Le^<YP>)抗原の組織内分布を調べることにより検索した。【材料および方法】剖検例より得られた肉眼的に病変のみられない舌を舌尖部と舌盲孔を結ぶ中点で前頭断し,10%中性ホルマリンにて固定後,通法に従い,パラフィン包埋,3μmの連続切片を作製した。ヘマトキシリン・エオジン染色を施し,病変のみられない舌,20歳代,50歳代,80歳代,各10例(男性,女性,各 5例)を検索の対象とした。抗PCNAマウスモノクローナル抗体(DAKO社)および抗Le^Yマウスモノクローナル抗体BM-l/JIMRO(日本抗体研究所)を用いてストレプトアビジン・ビオチン法にて免疫染色し,顕微鏡下(x400倍)にて舌背部の粘膜上皮細胞(基底層・有棘層・角化層)500個中の陽性細胞の分布と数を計測した。【結果】抗PCNA陽性細胞は20歳代,50歳代では基底層と一部有棘層に,80歳代では基底層にのみみられた。2)抗PCNA陽性細胞率は20歳代:23.2%±11.3%,50歳代:9.7%±4.7%,80歳代:5.6%±2.4%で加齢とともに有意(p<0.05)に減少していた。3)抗Le^Y抗原陽性細胞は20歳代,50歳代,80歳代のいずれにおいても,有棘層・角化層に多数みられ,わずかに基底層にも認められた。4)抗Le^Y抗原陽性細胞率は20歳代:84.1%±7.0%,50歳代:83.6%±8.4%,80歳代:84.3%±6.7%で加齢による有意差はみられなかった。【考察】舌粘膜上皮の老化は抗Le^Y抗原の発現ににより示されるアポトーシスの亢進よりは,PCNAの発現による示される細胞増殖能の低下を意味し,それが舌乳頭の減少や上皮の菲薄化などの老化に伴う肉眼および組織形態的変化として表現されると考えられた。
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