Research Abstract |
近年,癌の浸潤,転移に関連する細胞接着因子の解析が進められている. われわれは,口腔扁平上皮癌患者一次症例27例を対象に,細胞接着分子の一つであるE-カドヘリンの発現様式と臨床病理組織学的所見ならびに頚部リンパ節転移との関係について免疫組織化学的に検討を行った.症例の性別内訳は男性18名,女性9名で,年齢は40歳から86歳,平均60.8歳であった.部位別では舌13例,口底6例,歯肉5例,頬粘膜2例,口峡咽頭1例であった.原発巣におけるE-カドヘリンの発現は腫瘍の発育深度によって異なり,stageI,IIの癌14例中,E-カドヘリンが減弱する例は5例(35.7%)と少なかったのに対し,発育先端部では9例(64.3%)で,さらにstageIII,IVの癌13例では浅〜中央部で減弱する例は6例(46.2%),発育先端部で12例(92.3%)と多くなり,病期が進行するに従って,E-カドヘリンの発現が減弱していた.分化度と発育先端部でのE-カドヘリン発現様式についてみると高分化型は14例中11例(78.6%),中等度分化型10例中7例(70%),低分化型3例中3例(100%)が減弱型を呈しており,特に分化度別との関連性は示唆されなかった.癌浸潤様式では1,2型8例中5例(62.5%),3型8例中6例(75%),4型10例中9例(90%)が発育先端部でE-カドヘリンが減弱しており,浸潤傾向が強い程,減弱型が多い傾向にあった.リンパ節転移群では12例中,原発巣発育先端部におけるE-カドヘリンの発現が減弱する例は10例(83.3%)で,2例はE-カドヘリンが依然として発現していた.このようなリンパ節転移群で非減弱型を示す症例についてはE-カドヘリンの機能異常が考えられ,E-カドヘリン関連のカテニンについて検討を進める必要がある.
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