Research Abstract |
被染物が於かれている環境による被染物の変退色はこれまで変退色現象とその原因という面が強調されてきているが,染料の化学変化から捕らえた研究は非常に少ない。本研究は「物質収支からみた環境による被染物の化学的変化の解明」という大きな研究目的の一環として,6年度はナフトール染料およびアントラキノン系染料の塩素による酸化分解を,特に分解物の同定と物質収支を中心に検討し,その分解機構を明らかにすること,およびモデル染料によって得られた知見を汎用されているナフトール染料に適用することを目的とする。 1.4-フェニルアゾ-1-ナフトールおよび2-フェニルアゾ-1-ナフトールの二層系酸化分解を試みた結果,染料の塩素化物や分解物,ポリクロロフェノール類,ナフトール類,クロロナフトキノン等が得られた。 2.フェニル基のp-置換体について置換基効果を検討したところ,電子供与性が大きくなる程分解速度は速くなることがわかった。 3.酸化分解機構を分解物から推測した結果,塩素の求電子的攻撃により,ナフタレン環とアゾ基との結合が切断され,塩素化が起きることがわかった。 4.アントラキノン系染料の二層系酸化分解では,主に求電子塩素置換体が生成することがわかった。 5.汎用のナフトール染料の塩素による酸化分解については,現在検討中である。
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