Research Abstract |
住宅の基本的性能の一つに構造安全性がある。阪神・淡路大震災が起こり,建物の安全性が根本から見直され,さらに急進展してきた限界状態設計法などの新しい構造設計法が提案される現在,目標とする構造安全水準の設定を的確かつ明確にする必要がある。 構造安全水準は高いに越したことはないが,施主が建設費を出すことから,経済性を同時に加味しなくてはならない。さらに安全水準は物理的な指標のみから決まるだけでなく,社会的な合意に基づき設定されるものである。既往の安全水準設定手法には経済性をふまえたものはあるが,このような人間の意識に基づく設定手法はない。これは人間の意識を解明することが困難なことに起因すると思われる。しかし,心理学が発達し人間の潜在的な意識を抽出することも可能になってきた。そこで本研究では,社会を構成する人々が経済性をふまえた現実的な安全水準に関する意識をどのように有しているかを調査するため,その手法を工夫した。そして,以下の方法によってこれを解明する足がかりを得た。 (1)居住者が住まいの安全に対して潜在的にもっている要求安全意識の心理学的手法に基づくアンケート調査 (2)統計データおよび設計図書調査に基づくアンケート調査の検証 (1)に関しては,1994年に400名弱に基礎調査を実施していた。これをさらに改訂し,1995年に約200名弱の第2次基礎調査を実施した。この結果,より効率よく信頼性の高い回答を増加させることが可能になった。また,この結果を用いて,居住者の考える安全水準を新しい設計法に用いられる指標を用いて数値化した。(2)については,主に住宅に関する経済的統計データを用いて検証を行った。 今後は調査結果分析を終了し,問題を最終決定した上で大多数の一般居住者に本調査を実施し,続いて設計者への意識調査を行う予定である。
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