Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 2008: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
直鎖ポリエチレンイミン(LPEI,[-CH_2CH_2NH-]_n)は,約60℃以上では水に溶解するが,その水溶液を冷却すると約40℃を境にゲル状相分離して水に不溶になる.この現象は,Jinらが論文として初めて報告した.しかし,水溶液系でのLPEI鎖の凝集構造の温度依存性や,分子(LPEIや水分子)間の相互作用の詳細はよくわかっていなかった.そこで,本研究では,水溶系でLPEIが示す相分離環象の機構解明のため,温度変化に伴う水中のLPEIの分子構造を赤外および近赤外分光法により解析した. 室温でゲル状態のLPEI試料中では,2水和体結晶構造が形成されていることが,Jjnらにより報告されている.そこで,同様のLPEI試料の赤外および近赤外スペクトルを測定したところ,CH_2逆対称伸縮振動(v_aCH_2)およびNH伸縮振動・vCH_2の倍音(各々2vNH・2vCH_2)バンドが各々2912および6409・5788cm^<-1>に現れた.さらに,このゲルを加熱すると,上記のv_aCH_2・2vNH・2vCH_2バンドの強度が小さくなり,70℃以上でほぼ完全に消失した.一方,これらのバンドと入れ替わるように,新たにv_aCH_2・2vNH・2vCH_2バンドが各々2925・6464・5817cm^<-1>に現れた.70℃以上で現れた赤外・近赤外領域のバンドは,室温のものに比べてブロードであり,また,v_aCH_2・2vCH_2バンドは室温のものより高波数側にシフト(各々13・29cm^<-1>)していた.これは,LPEI鎖の購造が70℃以上で無秩序になっていることを示唆する. ここで,水溶液中で無秩序構造を持つLPEI鎖と水分子の相互作用の詳細を検討するために,水溶液と乾燥状態で融解させた試料(非晶に対応)の赤外・近赤外スペクトルを比較した.すると,水溶液でのv_aCH_2・2vCH_2バンドの波数は,乾燥状態で非晶状態にあるものより各々41・77cm^<-1>も高かった.この高波数シフトは,CH_2基に隣接するMH基が水分子と水素結合することによる効果だと考えると,合理的に解釈できた. 以上のことから,LPEI試料が加熱によりゲルから水溶液となる過程で,試料中のLPEI鎖が水分子と常に水素結合した状態のまま,2水和結晶構造から無秩序構造へと変化することがわかった.
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