Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
具体的内容:本年度においては、明清時代の碑刻資料を用いて、山西省汾河流域の水利用方式と関連規程を考察した。その結果、流域中における水利用規程の多くが12世紀に作成され、20世紀初頭に至るまで継承されたものであること、下流域においては、16世紀以降、水の売買・貸借が盛んに行われ水利用の不均等性を補填する互助システムとして機能したことを明らかにした。研究成果として、環境を共通テーマとする2008年史学研究会例会において研究報告を行い、「清濁灌漑方式が持つ水環境問題への対応力-中国山西呂梁山脈南麓の歴史的事例を基に-」を『史林』(第92巻第1号)に掲載した。さらに、現地碑刻調査にて得られた諸データを用いて「汾河下流域の水資源利用と開発に関する碑刻データベース」を構築した。意義と重要性:呂梁山脈南麓地域における山間部からの流出水を用いた灌漑方式が、地域社会の自律的管理のもとで700年間以上にわたる長期持続性を有したことは、この水利用方式が恒常的に発生する旱魃や水害を克服しうるシステム的耐性を持つものであることを意味する。これは、乾燥・半乾燥地域における水利慣行や規程の中に人々の環境適応のあり方を見いだすことができるとする研究の仮定を証明するものである。さらには、システムの耐久性を支えるものとして、水の売買や貸借が日常的になされたことを明らかにしたことの持つ意味は大きい。現在、各地で水不足が深刻化する中、国家および地方政府の施策として水利用権の売買が行われつつある。汾河流域の地域社会が持つ歴史的経験から、こうした現状に対しても有効な提言を与えることが可能となる。
All 2009 2008 2007 2006
All Journal Article (8 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (9 results) Book (2 results)
史林 第92巻第1号
Pages: 36-69
東洋史研究 第67巻第4号
Pages: 1-35
三島海雲記念財団研究報告書 第45号
Pages: 103-107
建設特色文化名城-理論探討与実証研究(北岳文芸出版社)
Pages: 163-169
特集北東アジアの中世考古学 アジア遊学 107
Pages: 88-97
地球環境を黒河に探る アジア遊学 99
Pages: 64-71
オアシス地域研究会報 別冊
Pages: 32-38
史滴 28
Pages: 120-134