Research Abstract |
耐震壁から基礎梁,杭へと伝達される地震時水平せん断力の経路を解明し,基礎梁の合理的な設計手法を提案する事を目的とし,事前に行った縮尺25%モデル試験体を用いた載荷実験の結果を基に,連層耐震壁,基礎梁,杭をストラットータイによってモデル化し,基礎梁の損傷予測を行った。また,このマクロモデルの汎用性を確認する為に,偏在開口を有する縮尺40%連層耐震壁試験体の計4体の静的載荷実験に関しても合わせて実施し,耐震壁のせん断性状に関する基礎データの収集を行った。 既往の基礎梁の設計手法では,杭から伝達される曲げ戻しモーメントと,引張側杭が負担する水平力のみを検討対象としている為,基礎梁上に位置する耐震壁から伝達される鉛直及び水平方向力の影響が考慮されておらず,基礎梁の合理的な設計を行う事はできなかった。しかしながら,柱,梁を軸バネとせん断バネ要素,また耐震壁部分をコンクリートストラットと鉄筋要素でモデル化し,耐震壁と杭基礎を含めた形でモデル化を行った本手法では,耐震壁の特に曲げ変形に応じて,基礎梁上下主筋の応力状態が大きく推移する事が確認され,静的載荷実験の結果とも良い適合性を示した。また,引張側の杭近傍における基礎梁下端筋の応力集中に関しても,基礎梁を線材置換する既往の設計手法では予測が困難であったが,今回提案したマクロモデルでは,杭と基礎梁の接続部分における応力伝達経路を考慮しており,基礎梁下端筋における応力集中も十分な精度で予測する事が可能となってしる。 偏在開口を有するRC造連層耐震壁の静的載荷実験では,最大耐力後,耐震壁のせん断破壊によって水平荷重が大きく低下する挙動が観測された。また,偏在開口を有する事で,載荷方向によって耐震壁内のコンクリートストラットを介して伝達される圧縮力の経路が異なり,その結果,各載荷方向の最大耐力が大きな影響を受ける事が分かった。
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