Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、メラネシアにおけるキリスト教信仰の実態およびそれを支える思考方法や行動規範などに関する民族誌的事例の提示・考察をとおして、同地域の人々が主体的に創造してきた独自の宗教観を明らかにするものである。本年度のはじめより、宗教人類学や宗教社会学、およびキリスト教研究に関する文献を批判的に考察するとともに、本研究員が収集した一次資料の整理分析をとおして、以下のことが明らかとなった。ソロモン諸島のニュージョージア島において、宗教に該当する現地語の概念はなく、キリスト教という外来語が、「宗教」に近似する概念として用いられている。同島の村落レベルにおいて、「宗教」という語は頻繁に語られるが、その指示対象は信仰よりも行為に偏向しており、これは既存の西洋起源の宗教概念とは異なる。たとえば、教会建物や聖書といった可視的な事象をはじめ、形式的な祈りや説教など、キリスト教関連のさまざまな事象が包含される。その一方で、国家レベルに目を向ければ、紛争や政治的混乱の状況下、「宗教」は、民族の共存や平和構築を目指すスローガンとして言説化されている。たとえば、1つの「宗教」を共有する人々の団結、神のもとでの平等などが語られる。そこにおいて「宗教」とは、具体的な行為を意味しているのではなく、ソロモン諸島の(あるいは全世界的な)キリスト教徒という、象徴的かつ包括的な意味が付与されている。このように「宗教」という語をめぐる状況は複層的であるとともに、西洋起源の宗教概念がそのまま受容されているわけではないことが明らかとなった。
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宗教と社会 14
Pages: 3-22
110007652980
『南方文化』 34
Pages: 91-112
40015865249
People and Culture in Oceania 23
Pages: 33-52
月刊言語 10
Pages: 98-101
オセアニア学会NEWS LETTER 85
Pages: 13-25