Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
|
Research Abstract |
本研究は,陸域生態系において多様な進化を遂げている維管束植物の繁殖システムと送粉共生系に着目し,花粉媒介昆虫の行動に関連した植物の繁殖戦略形成プロセスの解明と送粉共生系の環境変動に対する感受性について,植物と花粉媒介昆虫の相互作用の観点から明らかすることを目的とした.北海道の落葉広葉樹林下に生育する林床植物を対象とし,開花フェノロジー,訪問する昆虫種や訪問頻度,種子生産について林床植物群集全体レベルで調査を行った.林床植物の繁殖特性・光合成特性には,季節ごとに3つのタイプがみられた.1「春植物」は,林冠閉鎖までの短期間で生産と繁殖を終える.2「初夏咲き植物」は,光が減衰する初夏に開花し,暗い環境で果実生産を行う.3「夏咲き植物」は,開花と果実生産の両方を林冠閉鎖後の暗い環境で行う.繁殖成功(果実数/花数)は,春植物と夏咲き植物で高く,初夏咲き植物で低い.このように,光環境や同化産物の季節変化は植物の繁殖成功を決定づける.落葉広葉樹林下では,林冠木の展葉により光環境が劇的に減少する.春植物は春先の明るい期間のみを,夏咲き植物は夏の暗い期間を使うことにより,安定した光資源環境において生育する.一方,初夏咲き植物では生育期間中に光が減少する.資源環境の変動は植物に対して強い選択庄となる.初夏咲き植物では資源不足が繁殖成功を制限している.絶対的な光資源量は違うが,春植物と夏咲き植物では,潜在的な繁殖能力が高い.これらの安定した資源環境に生育する植物の繁殖成功を規定するのは,資源制限ではなく,花粉制限であった.繁殖システムと送粉共生系との関係は資源環境が安定した時期には特に重要な役割を果たしている.植物の繁殖成功を評価するにあたっては,花粉制限を引き起こす植物と花粉媒介昆虫の相互作用に加え,光合成活性や獲得資源の分配様式を統合的な理解をしていく必要があると考えられる.
|