Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
20年度は,スラブ(沈み込んだプレート)内地震の発生機構の発生が脱水不安定仮説で説明できるということが,揺ぎ無いものとなる成果があげられた. 前年度までに,北海道東部〜関東北部全域下の太平洋スラブにおいて,二重深発地震面・上面内の地震活動が深さ約70-90kmで帯状に密集する,上面地震帯という地震活動を見出した.さらに,上面地震帯が,海洋性地殻内において脱水を伴う相変化(blueschistよりeclogiteへの変化,Hacker et al.[2003])が予想される位置により発生することを見出した.この結果は上面地震の発生に脱水不安定仮説が関わっていることを示す結果である.また,この相境界は,温度上昇により生じるものであるため,温度が低い地域では,上面地震帯の形成される深さが深くなることが予想される. 昨年度までのDouble Difference震源決定の結果により,北海道島弧会合部下では局地的に上面地震帯が深くなっており,深さ100-120kmに存在することがわかった.そこで,その原因を探るべくDouble Differenceトモグラフィー法により,この地域の太平洋スラブ表面付近の地震波速度構造を詳細に調べた.その結果,日高地方下においてマントルウエッジ領域に特異な地殻物質が入り込み,それが深さ約70-90kmにおいて太平洋スラブ表面に接触し,マントルウエッジ対流を妨げていることが見出した.このように特異な地殻物質により(スラブと較べて)高温のマントルウエッジ対流を妨げたことは,この北海道島弧会合部のスラブ内が深さ70-90kmで低温状態であること,そして特異な地殻物質の存在しない深さ100kmに上面地震帯がシフトしたことと矛盾しない.このように,スラブの上盤側がつくりだす局地的な低温状態により上面地震帯が深部にシフトするという結果は,共同研究で行った関東地域での成果でもみられた.よって,今年度の結果は,上面地震帯が温度上昇による脱水をともなう相変化により生じることを,特異なテクトニクス場でも示した,重要な結果といえる.
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