Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2008: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
既存の幸福経済学研究をさらに精緻化する分析を行い,海外でその成果を報告した. これまでの幸福の経済学の文脈では,他者の所得の代理変数としてミンサー型の賃金方程式を推計しその当てはめ値を用いてきたが,この伝統的なアプローチには批判があるのも事実である.つまり,この方法論が正しいとすると,他者の所得を考えるとき,人々が計量経済学者と同じ方法を用いていることになり,そのような仮定は行動経済学的な見地からもっともらしくないと考えられている.同種の批判は経済学の文脈でもバーバルな議論として存在するが,明確な形で批判的証拠を提出したものは,私の知る限り存在しない.そこで,応募者の研究では他者の賃金の代理変数として,(1)サーベイで得られた主観的他者賃金と,(2)賃金関数の推計値から得られた伝統的な他者賃金の二つを用い,両者の結果の比較を行っている.結論として,社会的地位選好効果は,(1)の情報で確認される一方,(2)の代理変数を用いた場合,地位選好効果についての証拠は明確には示されなかった.この原因として,(1)においては他者賃金の推測値が,自己の賃金よりも高くなるというシステマティックなパターンが見られ,その「嫉妬」が他者賃金の主観的仕事満足度に対する負の効果として捉えられる一方で,(2)の情報では他者賃金の予測についての「妬み効果」が弱くなり,推計式において,地位選好効果としてあらわれない,ということがあげられる.論文の結論としては,(2)のミンサー賃金関数の当てはめ値としての他者賃金は,市場の平均を反映するのみで,自己の賃金よりも相対的に高くなることを事前には保証しないことが,社会的地位選好の分析にとって問題であることを指摘した.
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