Research Abstract |
ハーモニックウェーブレット(HWT)を用いた新たな故障診断法の構築を目指し,研究を行った.いままでの研究の成果で,解析対象信号が定常信号であるならば,HWT結果に現れる偽の波やノイズを除去し,有効な故障診断(ボルトの緩みや疲労き裂の検出)を行えることがわかっていた. 本年度は,ボルトを打撃した際の加速度振動データおよび音響データ(ともに非定常信号)に,HWTよりも周波数分解能を向上させたミュージカルウェーブレット(MWT)を適用して,ボルトの緩み検出を行った.その際に,MWT結果にもHWTと同様に,偽りの波が現れる問題が生じた,そこで,解析対象データから直流成分を除去した上で,打撃点を原点に点対象とする波形を仮定した.そして,解析対象データ範囲を拡張してMWTを行うことで,偽りの波を除去することに成功した.この解析方法を用いることで,ボルトの締付トルクの違いによるMWT結果の変化を確認でき,本手法がボルトの緩みを検知する故障診断技術に応用できる可能性を見出した. また,提案した故障診断法を適用する実機を作成し,実験を行った,実機は,平歯車や玉軸受,モータ等から構成されており,多くの故障箇所を導入できるようにした.平歯車の歯の折損,ピッチング損傷を対象に,HWTを用いた故障診断を行った,昨年度までに提案した手法は,定常信号の周期を正確に求める必要があった.そのために,自己相関関数を用いていた.しかし,作成した実機では完全な定常運転とはならず,歯車の回転周期(定常信号の周期)にゆらぎが生じた.そのため,自己相関関数の代わりに光電管を用いて歯車の回転周期を求めた.この工夫から,HWT結果に現れる偽の波やノイズを除去でき,歯先から2.0mm程度の歯の折損,および,ピッチング損傷に見立てた歯面60μm程度の減少を検出することに成功した.
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