Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究は,昨今の環境倫理学の閉塞的状況をふまえて,現場から環境倫理を新たにたちあげることを目的とするものであった.具体的には,道徳的多元性を担保すると同時に,多様な人々のあいだを調停し,かけがえのない〈生〉を保障する正義を備えた環境倫理の枠組みを,事例研究を基に構想しようとするものであった.筆者は,米国カリフォルニア州マトール川流域の事例を,社会学的フィールドワークを行って分析し,「〈応答と関係の場〉で開かれる正統化のダイナミズム」という理論的枠組みを抽出した.そして,これまでの環境思想や環境倫理学,および環境思想周辺の近接分野の研究,たとえば現象学的場所論などとの比較検討を通じて,それを理論的に深化させ,道徳多元性と正義に開かれた,新たな環境倫理の枠組みを提示した.学際的な研究であり,実証と理論を明確に結び付けた本研究は,環境倫理学の新たな展開として非常に意義深いものである.また,これまで政治経済学や地域研究など,ばらばらに扱われていた人文社会科学の環境問題研究について,一つの共通する理論的土台を与えるものであり,その意味で,環境倫理学を再び,多様な学際的な研究における重要な参照されるべき分野として位置づけなおす研究でもある.なお,本研究の業績は,12月に東京大学に提出した博士論文『多声性の環境倫理-流域の保全再生をめぐる正統性再構築のダイナミズムを軸に』にまとめられた(2008年3月博士号(環境学)取得).
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