正三角格子構造を持つ有機導体の、スピンフラストレーション及び低温電子物性の研究
Project/Area Number |
06J11274
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Biophysics/Chemical physics
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒崎 洋輔 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2006 – 2008
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2008)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 物性実験 / 核磁気共鳴 / 有機導体 / スピンフラストレーション / バンド幅制御 / ドーピング / モット転移 / キャリアドーピング |
Research Abstract |
本研究の対象物質であるκ-(BEDT-TTF)_4Hg_<2.78>Cl_8は、非整合なHg鎖によって、有機導体としては例外的に1/2充填のバンドにキャリアドーピングが施されていると考えられる物質である。またこの物質は正三角格子構造を有し、スピン液体状態が実現しているκ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3と同様に非常に強いスピンフラストレーションが期待される。本年度においては、この物質に2重構造型圧力セルと圧力媒体としてDaphne7474を用いて最大3.8GPaの静水圧を印加し、核磁気共鳴実験を行った。 本物質は、常圧低温で異常な反強磁性揺らぎが存在するが、その発達した反強磁性揺らぎが0.8GPaの静水圧で抑制されることを昨年度確かめた。この抑制は約1.6GPaまで続き、その後は加圧しても低温での反強磁性揺らぎの変化は小さかっか。電気抵抗の結果と比較すると、本物質がバンド幅制御による強結合領域から弱結合領域への変化を起こせる初めての物質であることを磁性の面からも確かめられた。また常圧では核磁気共鳴の吸収スペクトルの線幅が低温で広がるが、線幅の磁場依存性の測定などから、本物質においてκ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3と同様に磁場誘起の交代磁化が低温で生じていることを明らかにした。これらの実験結果を、強相関電子系におけるアンダーソン局在、電荷の自己組織化による局在化とその金属絶縁体量子相転移、反強磁性量子臨界点という3つのシナリオを元に考察した。未だその結論は得られていないが、今までにない物理が実現している可能性を提示できた。 また最大3.8GPaの静水圧を印加しても典型な金属状態であるフェルミ液体的な振る舞いは観測されず、10K以下の低温において、不均一な電子相かおることを明らかにした。詳細は定かではないが、本物質において、スピンフラストレーションやドーピングや不純物効果などによって新規な電子相が実現していると考えられる。
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Report
(3 results)
Research Products
(7 results)