Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
茨城県霞ヶ浦から69匹のコイを捕獲し,個体ごとにその遺伝的特性を5つの核ゲノムSNPマーカーにおける交雑度(0-10スコア,0:純系導入型,10:純系在来型)によって評価した.同時に,生息場所と餌資源の利用の変化を調べるために,筋肉の炭素窒素安定同位体比(δ^<13>C,δ^<15>N)を測定し,交雑度との関係をしらべた. 捕獲個体の中には遺伝的に純系な在来型は認められず,さまざまな交雑度を示す個体が含まれていた.それらの交雑度とδ^<15>Nには相関関係がみられなかったが,δ^<13>Cには,交雑度が高いほど低くなる線形関係が認められた.すなわち,遺伝的に在来型に近いものほど沖帯の食物網を利用する割合が高いことが示唆され,ぞれは,餌資源の利用割合を推定する混合モデル(IsoSource)によって確かめることができた.コイの利用する代表的な餌資源4つ(ユスリカ,プランクトン,テナガエビ,付着藻類)の同位体比を測定し,利用割合をモデルで推定したところ,在来型に近い遺伝的特性を示す個体は,沖帯のプランクトンやユスリカの利用割合が高く,沿岸の付着藻類の利用割合は低かった.これらの結果は,導入型との交雑によって,在来型に特有の機能的特性が失われることを示唆する.一方で,遺伝的にみて導入型に近いグループはδ^<13>Cのバラツキが大きく,機能的な異質性,すなわち,飼育品種に近いものから,野生化して野外環境に適応したものまで,機能特性の異なるものが混在していたと解釈できた. 本研究は交雑を通した遺伝的な効果によって,在来型コイの機能的役割を変化させることも示唆された.今後,在来型個体群や淡水生態系の保全・再生を進めていく上で,さらなる基礎生態学的・遺伝学的な情報の蓄積に加え,コイを含む水産有用魚の無秩序な放流の見直し,純系在来型を親とした繁殖プログラムの確立など,総合的かつ長期的なマネージメントが望まれる.
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