Research Abstract |
本研究は、蛍光変化を用いて選択的に金属イオン・有機分子を認識するセンサーを開発し、高度なイオン・分子認識系の構築を目指すことを目的として行われた。本研究を通じて、これ迄に明らかとされた結果を以下に示す。 1.1-ナフトエ酸誘導体の系について 異なる長さのポリエーテル鎖の両端にナフタレン環を持つ化合物(1,n-bis(1-naphthylcarboxy)oxaalkanes ; Naph-COO(CH_2O)_n-OC-Naph : n=1,2,3,4,5,6)を合成し、その光化学・光物理学的性質及び、光機能分子としての有用性について検討した。この系では、2つのナフタレン環の軌道が一番重なり易いn=2のもので直接励起状態(LE)からの発光に対する分子内エキシマー(EX)発光の割合(Φ_<EX>/Φ_<LE>)が最大であり、エキシマーを形成しやすいことがわかった。また、金属イオン認識能については、アルカリ金属イオンに対してはいずれも蛍光スペクトルの強度,形に変化は見られなかったが、n=4,5,6のものについては、アルカリ土類金属イオンであるCa^<2+>,Ba^<2+>に対して選択的に蛍光変化(消光,LEとEXの発光強度比の変化)が見られた。これは、金属イオンセンサーとしての有用性を示すものである。 2.その他の系について ポリエーテル鎖の両端にそれぞれピレン,p-置換安息香酸をつないだ系、アザクラウンエーテルにジメチルアミノ安息香酸をアミド結合でつないだ系においても、特定イオンに対して選択的に蛍光変化がみられるという結果が得られた。これらの系及び、シクロデキストリンを化学修飾した有機分子認識系については、現在研究続行中である。 3.分子内エキサイプレックス形成と基底状態配座 新しい金属イオンセンサーを開発する際の基礎的研究として、分子内エキサイプレックス形成と基底状態配座の関係について、理論計算等によって検討した。2-(1-Pyrenyl)ethyl p-cyanobenzoateの系では、基底状態で電子ドナー,アクセプターの接近したfolded配座の寄与が大きいことを明らかにした。また、予想される安定構造を3Dで示した。 以上、1.については、学会発表予定であり、論文投稿準備中である。2.については、現在精力的に研究を進めている。3.については、The Science Reports of the Hirosaki Universityにおいて、2報掲載予定(in press)である。
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