Project/Area Number |
07740660
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
系統・分類
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺内 良平 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50236981)
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Project Period (FY) |
1995
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1995)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1995: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 分子集団遺伝学 / Pgi / オニドコロ / 野生植物 / DNA塩基配列 |
Research Abstract |
ヤマノイモ属植物オニドコロの野生集団を材料にアロザイム分析をおこなったところ、解糖系の酵素フォスフォグルコースイソメラーゼ(PGI)遺伝子座において高いヘテロザイゴシテイが観察された。近畿地方の24集団において、3つの対立遺伝子Pgi-a、Pgi-b、Pgi-cがともに高い頻度(それぞれ0.31、0.34、0.31)で存在した。このような現象は、酵素多型が突然変異と遺伝的浮動のバランスで保たれているとする突然変異の中立説によっては説明しにくい。そこでこの遺伝子座に変異が維持されている機構を知る目的で、DNA塩基配列を比較し、分子集団遺伝学的解析をおこなった。得られた結果は以下の通りである。 (1)オニドコロPgi遺伝子cDNA全長の塩基配列(1701bp)を、アロザイム遺伝子型のわかっている10個体(20遺伝子座)、オニドロコ近縁種2種各1個体(ヒメドコロおよびカエデドコロ)について決定し比較した。 (2)その結果、全部で8塩基座位(2座位は同義置換、6座位は非同義置換)に変異が見いだされた。非同義置換をおこしている6座位のうち2位座(335および714塩基座位)が3つのアロザイム型(Pgi-a、Pgi-b、Pgi-c)の分化をもたらしていることがわかった。 (3)オニドコロ近縁種2種のPgi遺伝子cDNAでは、335および714塩基座位にオニドコロPgi-bと共通の塩基が見られた。このことはオニドコロにおいてPgi-bが最も古い対立遺伝子であり、Pgi-aとPgi-cが、Pgi-bから各1アミノ酸置換で生じたことを示している。 (4)さらにアロザイム遺伝子型のわかっている15遺伝子についてイントロンの塩基配列を比較したところ、Pgi-bのアロザイム型をもつハプロタイプ間に最も高い塩基多様度観察された。Pgi-aとPgi-cの塩基多様度は同程度である。またこの情報をもとに遺伝子系統樹を作成すると、Pgi-bのうちあるものはPgi-aと、またPgi-bのうち別のものはPgi-cとグループをつくることも明らかになった。これらの情報から、Pgi-aとPgi-cは、Pgi-bから同じ頃に出現し、集団中に頻度を増してきたことがわかった。 (5)Pgi遺伝子領域において、Tajima(1989)のテストは、突然変異の中立説を棄却しなかったが、Mcdonald&Kreitman(1991)のテストでは、同義置換と非同義置換とを比較した時、オニドコロ種内に有意に多い非同義置換が観察された。 現在Pgi遺伝子座に自然選択が働いている可能性を探るために、Pgi-a、Pgi-b、Pgi-cのcDNAをin-vitro expressionの系で発現させて、酵素活性の比較をおこなっているところである。
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