Research Abstract |
本研究の目的は,3軸人工衛星などの柔軟構造物の姿勢制御のために提案しているロバスト制御系設計法の効果を,実験により検討することにあった.次の項目1はこの目的に沿った研究の成果である.項目2は当初の計画にはなかったが,この設計法についての検討を行ない得られた成果である.項目3はまとめである. 1.[実験装置の改善とモデル,制御系設計の検討]実験装置は片持の柔軟梁を回転するという単純な機構を持つ.これまではその回転変位のみが計測できたが,本年度は半導体位置検出素子を用い,梁に付した発光ダイオードの振れ角を計測する機能を付した.梁の振れ角の計測により,梁の粘性減衰と回転部の固体摩擦を同定することができた.これにより,より正確な制御系設計モデルが実現できた.このモデルに基づき検討を行なった結果,制御器が持つべき内部モデルが明らかになった.この知見をもとの制御系設計,実験を行なった.他のロバスト制御系設計法による実験結果と比較することによって,提案している手法の特徴,長所が明らかとなった. 2.[制御系の安定性と設計法の拡張] 提案している設計法の,理論的な安定性に関する検討をおこなった.その結果,制御器を正実にすることで,如何なる場合でも制御系が安定となることがわかった.しかし,このような制御器の実現は非常に難しく,実用的には有界性も考慮した設計が必要であるという結果を得た.また,この設計法には適用できる制御対象のクラスに制限があった.そこでこの制限を緩める設計法を新たに考案した. 3.[今後の展開]梁の振れ角の計測ができるようになったが,この信号を実際の制御に利用するところまで至らなかった.そのため,項目1で行なった以外の制御系設計法の検討がなされていない.実験装置に残る問題点を解決して,今後つめていきたい.
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