Research Abstract |
本研究では,スベスベマンジュウガニにgonyautoxin(GTX)を注射もしくは経口投与するとsaxitoxin(STX)群に変換した上で蓄積することを明らかにした。その概要は以下の通りである。 注射投与の場合:1995年6月に沖縄県石垣島川平湾内の小島で採集したスベスベマンジュウガニ12個体につき,右鉗脚の腕節と長節の接合部からGTX_<2,3>標品の3%食塩水溶液(5.7μmol/ml)を体重20g当たり0.2ml注射した。3個体は30分以内に直接,残り9個体は27℃の水槽中で12〜48時間飼育後,HPLC-蛍光法により右鉗脚と内臓の麻ひ性貝毒(PSP)含有量を調べた。その結果,鉗脚では毒未投与区,注射30分以内,12,24及び48時間後のGTX_<2,3>の平均含有量はそれぞれ0,41.2,1.9,1.6,1.5nmol/gで,12時間以内に投与された毒の大部分が見かけ上消失した。これに対し,同STXの平均含有量は0.7,3.8,3.1,10.6,7.2nmol/gで,注射直後から顕著な増加が見られた。STX群の他の成分については,毒未投与区との有意な差は殆ど見られなかった。内臓でもほぼ同様な結果が得られた。 経口投与の場合:同様のスベスベマンジュウガニ12個体を27℃の水槽に入れ,1日1回,1個体当たり0.2gの有毒餌料(GTX_<1・4>の混合標品をエビすり身に添加し,寒天で固めたもの;毒含有量1.1μmol/g)を投与した。飼育開始後3日毎に3個体ずつ水槽から取り出し,鉗脚と内臓について各PSP成分の含有量を調べたところ,GTX_<1・4>はいずれの個体からも検出されなかった。これに対し,毒未投与区,飼育開始後3,6,9及び12日目におけるSTX群の総含有量は,鉗脚で2.1,18.8,35.1,44.2,31.1nmol/g,内臓で0,43.5,81.0,57.4,31.2nmol/gと,いずれも毒投与により顕著に増加した。蓄積した毒は,鉗脚,内臓ともにSTXとneoSTXが主体で,他の成分については飼育前後ではほとんど差がなかった。飼育9日目までの毒蓄積率は20〜30%程度と計算された。
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