Research Abstract |
角膜創傷治癒過程におけるアラキドン酸カスケードの役割については、十分に解明されてはいない。本研究においてはラット角膜再上皮モデルを作製して、プロスタグランディン製剤(PG製剤)の影響を検討した。今回は、緑内障の治療薬として近年、初めての代謝系PG製剤として登場したイソプロピルウノプロストンを使用した。雄ラット300〜350g程度のものを使用しCO_2窒息死させ、直ちにGipsonらの方法で角膜上皮剥離を作製する。直径3mmのパイオプシ-パンチで角膜中央部に傷をつけ上皮剥離させる。この状態で角膜上皮基底膜は、実質上に残存することが確認されている。眼球摘出し強角膜切片を作成する。その際に虹彩,水晶体は、丁寧に除去する。器官培養はGipsonらの方法に従い強角膜切片を、Eagle's minimum essential medium (MEM)で、10回洗浄しプラスチック組織培養皿(シャーレ,35℃,5%炭酸ガス)内にパラフィンで作られた角膜支持用の支柱にのせる。イソプロピルウノプロストンと共に器官培養し、角膜再上皮化を測定した。コントロール及びイソプロピルウノプロストン0.005%, 0.01%, 0.01%では、培養23時間までに、上皮欠損領域は完全に再上皮化された。また0.015%, 0.025%では再上皮化が有意に遅延した。培養18時間での上皮剥離欠損面積に対する再上皮化率は,コントロールで98.0%±2.6%(n=8), 0.025%イソプロピルウノプロストンで69.4±10.6%(n=7)であった。(P<0.01)ラット角膜上皮剥離モデルにおいて、イソプロピルウノプロストンは角膜上皮の再上皮化を遅延させた。 本結果はシクロオキシゲナーゼ代謝物質が創傷治癒、特に上皮の遊走に関与することを示唆した。今後、眼科治療製剤として出現する可能性が高いPG系製剤における副作用の機序の解明にも、大切な知見と考えられた。
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