Research Abstract |
正常口腔粘膜における接着分子の発現状態を明確にするために、インテグリンファミリー,カドヘリンファミリー,免疫グロブリンファミリーに属する接着分子で,上皮組織での発現が報告されている全ての接着分子について免疫組織化学的に検討した。 その結果,正常口腔粘膜上皮において,インテグリンα6,β4は,基底細胞の基底膜側に,α2,3,5,β1は基底層を中心に発現を認め,E-カドヘリン,デスモグレインは,棘細胞層を中心に発現,ICAM-1,VCAM-1は発現は認めなかった。以上の結果から,α6,β4は基底細胞と基質の接着に,α2,3,5,β1は主に基底細胞と基質,一部上皮細胞間の接着に,カドフェリンは上皮細胞間の接着に関与している可能性が示唆された。ICAM-1,VCAM-1は正常口腔粘膜では発現せず,その発現にはサイトカインなど何らかの因子が関与すると考えられた。 さらに部位別でみると,歯肉と頬粘膜では大きな違いはなかったが,インテグリンα5は舌にのみ発現を認めており,舌背部粘膜上皮は乳頭部と乳頭間上皮における接着分子の発現状態が異なっていた。以上の結果から,舌乳頭部の上皮は既に報告したケラチンの発現と合わせて特殊な細胞群より構成されていることを示した。また,口腔粘膜病変に関する臨床的検討,症例報告を行った。
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