Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1995: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
ヒポカルシンおよびneural visinin-like calcium-binding protein2(NVP2)は神経特異的23kDaカルシウム結合蛋白質ファミリーに属する蛋白質で,主に大脳皮質,海馬などの投射型神経細胞に分布している.両者のアミノ酸配列は網膜で明暗順応に関与するリカバリンと相同性が高いことから神経細胞での情報伝達の効率を調節する機能が想定されている.老化した脳ではある種の神経細胞でカルシウム代謝の変化が起こり,ヒポカルシン,NVP2もこれに関連して発現が変化すると考えられる.そこで本研究では,ラットを用いて老化に伴う両蛋白質の発現の変化を検討し,これらの蛋白質と神経細胞の老化の関連を追及することを目的とした. まず,ヒポカルシン,NVP2に対する特異抗体を用い,生後4カ月,1年,2年のラット大脳皮質および海馬から抽出した蛋白質に対するイムノ・ブロットを行い,定量的に検討した.生後1年では,両蛋白質とも有意の変化は認めなかった.生後2年では,NVP2は大脳皮質,海馬ともに生後4カ月時と比べ約70%と有意に発現が減少したが,ヒポカルシンは両部位とも約90%と発現が維持されていた.次に,細胞レベルでの発現パターンを検討するために,生後2年のラット脳切片に対し免疫組織染色を行った.NVP2に関しては,大脳皮質,海馬ともに細胞質も神経突起も一様に染色強度が低下していた.ヒポカルシンに関しては,大脳皮質錐体細胞と海馬アンモン角錐体細胞では細胞質,神経突起とも染色強度は変わらなかったが,歯状回顆粒細胞では全般に低下し,細胞ごとに異なる染色強度を示した.以上のように,ヒポカルシンとNVP2は,老化脳で異なる発現調節を受け,情報伝達調節においても互いに補償しあい,老化により変化する神経細胞の機能を維持している可能性が考えられた.今後は他のファミリー蛋白質についても検討を行う必要があると考える.
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