Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
「近世和文小説の研究-国学研究と読本創作の相関についての分析-」は、国学研究と読本創作が互いに影響を及ぼし合う様相を、和文小説とそれを取り巻く文化状況に注目し、研究するものである。21年度は、賀茂真淵の『源氏物語』研究についての論考を発表した。本論文では、実践女子大学が所蔵する『源氏物語新釈』の一部を、真淵自筆草稿本であると認定。その上で、『源氏物語新釈』の推敲過程を明確に提示した。真淵は和文創作を奨励した国学者であり、また、和文小説の収集作業の中で、彼の門弟で和文小説を著した人物が少なくないことも明らかになってきた。その意味で、本論文は和文小説の成立基盤となった国学(特に物語文学の受容)についての重要な研究成果となった。さて、この三年間にわたる研究をまとめると以下の通りである。1.作品創作の実体解明。五井蘭洲、上田秋成、石川雅望らの作品を、彼らの古典研究との相関関係に注目して分析した。2.文学史上の位置づけ。大田南畝と曲亭馬琴の言説を手がかりに、芍薬亭長根の読本を分析し、当時における雅文体志向を確認した。3.近世和文小説の全容把握。和文小説を収集・整理し、目録にまとめた。特に注目すべき作品については解題と翻刻を作成した。以上の研究によって、近世和文小説研究の基盤を整えるという所期の目標を達成した。なお、この三年間で発表した論文・著書は以下の通りである。19年度は、「近世和文小説と「誤読」-『飛弾匠物語』についての分析」、「安見宗隆『をりはえ物がたり』解題と翻刻-近世和文小説の一例」の2本。20年度は、「芍薬亭長根『坂東奇聞濡衣双紙』考-『通俗金翹伝』の利用法を中心に」、「大田南畝の読本観-芍薬亭長根『坂東奇聞濡衣双紙』から見る」、「服部高保『てつくり物かたり』解題と翻刻-近世和文小説の一例」の3本。21年度は、「賀茂真淵『源氏物語新釈』考-実践女子大学黒川文庫蔵本についての検討」、『三弥井古典文庫雨月物語』(田中康二氏、木越俊介氏との共著)の2本である。
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All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (5 results) Book (1 results)
鈴屋学会報 26
Pages: 49-64
国文論叢 41
Pages: 1-14
国際日本文学研究集会会議録 32
Pages: 15-34
国文学研究ノート 44
Pages: 46-62
国文学研究ノート 第42号
Pages: 28-50