強相関電子系における量子臨界点の新奇な臨界性と波及効果の研究
Project/Area Number |
07J03063
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
原子・分子・量子エレクトロニクス・プラズマ
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三澤 貴宏 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2007 – 2008
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2008)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 量子臨界現象 / 一次相転移 / 重い電子系 / 非フェルミ液体的挙動 / Yb化合物 |
Research Abstract |
固体中の電子がバンド幅程度の大きなクーロン斥力で相互作川しあう系は強相関電子系と呼ばれ、近年の固体物理学の中心的な研究対象である。この強相関電子系においては、電子間に働く強い相互作用の結果、様々な秩序が競合しあうことが知られている。そのため、制御パラメターのわずかな変化によって相転移の臨界温度が絶対零度にまで下がり、量子臨界点がしばしば出現する。この量子臨界点近傍では、低温での物理量の温度依存性は通常の金属相を普遍的に記述すると考えられているランダウのフェルミ液体論に従わず、いわゆる非フェルミ液体的挙動が現れる。これは量子臨界点近傍では、通常の金属の性質が劇的に変化していることを示している。そして、この非フェルミ液体的挙動が現れる量子臨界点近傍で異方的超伝導などの強相関電子系特有の新奇な現象が発現している。これは、量子臨界点の性質が強相関電子系特有の新奇な現象と密接に関わっていることを示唆しており、その本質を明らかにする研究が注目を集めている。 量子臨界点近傍での非フェルミ液体的挙動を説明する従来の理論としては「スピン揺らぎ理論」があるが、近年の実験で、この従来の理論では説明できない非従来型の量子臨界性が数多くの物質で発見されている。その最も典型的な物質がYbRh2Si2である。この物質では反強磁性の量子臨界点近傍で一様帯磁率が発散的に増大するといった、不可解な振舞いが観測されている。この実験事実は、量子臨界現象の統一的な理解には従来の枠組みを超えた新しい視点が必要であることを示している。 今回の申請研究であげた主な成果としては、上記の物質で観測されている非従来型の量子臨界性が一次相転移の近接効果で説明できることを示したことである。従来の量子臨界点は絶対零度で連続相転移が起きる点であるが、この連続相転移が一次相転移に切り替わるところで「量子三重臨界点」という非従来型の量子臨界点が現れる。この量子三重臨界点の性質を従来のスピン揺らぎ理論を拡張することで明らかにした。そして、この量子三重臨界性が、YbRh2Si2の反強磁性量子臨界点近傍で観測されている非従来型の量子臨界性をよく説明することを示した。 今回の申請研究で明らかにした、この非従来型の量子臨界点の臨界性は量子臨界現象の研究に新しい視点を加えるだけでなく、強相関電子系の未解明の問題である、高温超伝導などの特異な現象を解明する上で重要な役割を果たすことが期待される。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)