Project/Area Number |
07J03678
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Japanese literature
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中野 貴文 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2007 – 2009
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
|
Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2008: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2007: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
|
Keywords | 兼好 / 徒然草 / 消息 / 中世王朝物語 / 光源氏 / 源氏物語 / 阿仏尼 / 十六夜日記 / 紫式部日記 / 大槐秘抄 |
Research Abstract |
二年間にわたって続けてきた消息的テキストの文学史的な位置つげを明らかにする研究のまとめとして、消息的テキストの中心である『徒然草』の文学史的性格を闡明した。これまで論じてきた通り、『徒然草』の序段から三十数段までのいわゆる「第一部」には、「身ぬ世の人へ宛てた消息」という性格が濃厚であった。加えて、幾つかの章段からは、『源氏物語』、及びその強い影響下に成立した中世の王朝物語の類と非常によく似た表現・美意職が看取された。具体的に言えば、「第一部」には閑居の理想を説いた第五段や晩秋の美を説いた第十一段など、『源氏物語』の中でも「賢木」から「須磨」にかけての光源氏を彷彿とさせる章段が散見する。これは兼好が、失脚し閑居において無聊を箪で慰める源氏の姿を借りる(したがって著名な序段の「つれづれ」も、ある種の擬態・ポーズと見るべきであろう)ことで、『徒然草』という文学史的に特異なテキストを書き進める根拠としたためであると思われる。『徒然草』「第一部」の内容は、兼好固有の思想として即時的に理解されるのではなく、むしろこのような執筆姿勢によって規定されたものとして把握されるべきなのである。以上の内容をまとめた論文を『日本文学』に投稿し、二〇一〇年六月号に掲載されることとなった。『徒然草』は、「書く」という行為の次元において『源氏物語』と密接につながっており、さらに同時代の物語群とも強い関連を有している。同論文は、従来は指摘されることの少なかった古典テキストと『徒然草』との影響関係を解明したことによって、中世文学史の見直しの契機と成り得るものと確信する。また、共著『大学生のための文学レッスン古典編』を上梓し、『徒然草』の文学的性格を広く世に問うことにも貢献した。(733字)
|