Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は、ダイオキシン(TCDD)の汚染マーカーとしての重要性を広く認められながらその存在意義さえ不明であったチトクロームP450(CYP)分子種のダイオキシン毒性における新たな役割を明らかにすることである。我々はこれまで、TCDDやβ-naphthoflavone(BNF)によるAh受容体(AhR)の活性化がゼブラフィッシュ胚において中脳血流遅延を引き起こすことを見いだし、有用な発生毒性モデルであることを報告してきた。昨年度までに、モルフォリノアンチセンス法によるAhR2およびCYP1C2ノックダウン処置で、TCDDおよびBNF誘発性の中脳血流遅延は有意に回復することを明らかにした。本年度はまず、CYP1C1ノックダウンによっても、CYP1C2と同様に血流遅延は回復することを明らかにした。また、頭部切片を用いてin situ hybddizationを実施したところ、TCDD処置によりCYP1C1/1C2両分子種が中脳静脈で誘導されることを確認した。以上の成績は、TCDDやBNFによる中脳血流遅延にAhR2を介して誘導されたCYP1C1/1C2が関与することを示唆している。一方、TCDD暴露によって中脳静脈および前脳動脈の走行に異常が認められた。走行異常はTCDD濃度依存性に増加し、分岐、弧の縮小、血管新生などに分類された。TCDDによる両血管の走行異常は、AhR2もしくはAhR nuclear translocator 1(Arnt1)のノックダウンにより回復した。またBNF処置によりTCDDと類似した血管走行異常が観察され、この異常もAhR2およびArnt1ノックダウンによって回復した。TCDD処置による両血管の血流遅延は抗酸化物質によって回復したが、血管の走行異常に変化はみられなかった。以上の成績は、AhRの活性化が血管形成にも影響しうることを示唆する。
All 2009 2008
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (11 results)
環境毒性学会誌 12
Pages: 149-152
Toxicology and Applied Pharmacology 234
Pages: 33-40
最新獣医公衆衛生 直面する課題の現状と対策6章 野生動物にみられる環境汚染の影響(チクサン出版社)
Pages: 106-113