Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2009: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
空間的に離れた物体が適切な時間間隔で交互に提示されると運動が知覚され(仮現運動),物理的入力が何ら存在しない運動軌道上に内的な物体表象が形成される。本研究では,まず仮現運動軌道上に提示されたターゲット刺激に対する感度の低下を指標に,輝度極性や方位,形といった低次の物体特徴に関して,運動物体表象は誘導刺激と同じ物体特徴を保持して内的に表現されることを明らかにした。一方,運動物体表象が保持する奥行き情報について,物体の定位位置ずれ量を指標とした検討を行ったところ,運動物体表象は,特に凸に関して2次元と3次元との間の中間的な奥行き情報を持つ情報圧縮された物体として表現され,低空間周波数成分の濾過というアルゴリズムによって内的に実現されることが明らかとなった。また,仮現運動軌道上で生じる運動方向反転に対する気づきの度合いを指標とし,運動物体表象形成過程には,局所的には一貫性のない物理入力を一貫性のある滑らかな運動知覚へと内的に変換する機能があることを示した。以上の知見から,運動物体表象の形成は脳内で機能局在的に実現されるよりむしろ,初期視覚処理,運動処理,物体認知を司る部位の間のネットワークとして実現されていると考えられた。事実,NIRS(近赤外光スペクトロスコピー)を用いた脳機能測定の予備実験では,運動処理と物体処理を司る高次の領域以外にも多くの脳活動が見られ,ネットワークの特定には,空間的側面だけではなく,時間的側面の詳細な検討が必要であると考えられた。さらに,実際には静止している映像が,動きの情報を持つ音によっていて動いて見えることも明らかとなり,運動物体表象が異なる感覚処理経路において共有されることが示唆された。以上,人が脳内で行う情報処理方略に関する知見は,情報工学あるいは臨床的に応用可能であり,現実場面への貢献も期待されると考えられる。
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