Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
一般的に溶液中の光化学反応は,励起直後にラジカル対(RP)やラジカルイオン対(RIP)を生成する.これらはラジカル間距離が非常に近くその後の反応に影響する.磁気共鳴法はスピンを直接観測することができるため,スピンの研究において非常に有効な手段である.また,RPやRIPはクーロン力が弱いため散逸が非常に速く,均一溶液中で短寿命(〜数10ns)である.しかし,2-propanol中のxanthone(Xn)とN,N-diethylaniline(DEA)からなるRIPの寿命は約180nsと非常に長いと報告されている.そこで本研究は,時間分解ESR(tr-ESR)法を用いてRIPの直接観測を試み,長寿命となった理由についてRIPの環境を含め,より詳細な情報を得ることを目的とした.さらに,ESR磁場に対するレーザー偏光面を平行(B_0//E),垂直(B_0〓E)に入射して測定することでMagnetophotoselection(MPS)の観測も試みた.1,2-Propanol中のXn/DEA系の光反応 反応は^3Xn+DEA→Xn^-+DEA-^+とわかった.早い時間ではXn-^-とDEA+^+からなる長寿命RIPを観測することに成功した.得られたスペクトルは三重項機構(TM)の寄与をもつスピン相関ラジカル対(SCRP)を示した.回転相関時間(τ_c)と緩和時間の関係からRIPを形成した直後は局所的に不均一状態となっていることが示唆された.また,RIPの半径は0.44nmと見積もることができ,RIPは周りの溶媒を含んだ巨大な集合体を形成していると考えられる.2,高粘性溶媒中のXn/DEAの光反応2-propanolにcyclohexanolを加えて測定した.このとき,^3Xnのスピン分極がRIPにTMとして反映され,RIPが混合溶媒中で運動が束縛されて巨大な溶媒を含んだ集合体を形成し,非常に遅い回転をしているためRIPとしてのスピン双極子-双極子(d-d)相互作用が観測された.また,B_0//E,B_0〓Eで測定したところ,100-200nsでMPSを,400-500nsではS-T_0 mixingを通してのT_0状態の消失を観測した.MPSを2つの動力学モデルとシミュレーションを用いて解析した結果,電子スピン間距離が0.74nmとわかった.また,Xn/DEAはRIPからすぐに散逸せず,溶媒なども含んである程度の大きさを保ったRIPとして存在し,d-d相互作用が観測できるくらいゆっくり回転,あるいは固まった状態になっている. これらの研究を通じて,Xn/DEAは反応開始直後に近接した^3XnとDEA間で溶媒を介して素早く電荷移動反応し,励起三重項からRIPへのスピン分極移動をする.その時,溶媒を含んだ巨大なRIPを形成することを解明した.
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