Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
植物は、高地環境への進出に伴い、花や繁殖器官への投資を増大化させる傾向にある。本研究ではこのような高地環境への適応を担うゲノム基盤の解析を行ってきた。ハクサンハタザオはモデル植物シロイヌナズナに最も近縁な系統の一つであり、日本の伊吹山と藤原岳においては、ハクサンハタザオだけでなくハクサンハタザオから二次的に進化した高地生態型であるイブキハタザオもみられ、繁殖器官への投資が増大していることを明らかにしてきた。そこで、近縁種であるシロイヌナズナで開発されたゲノミックマイクロアレイを用いて、伊吹山のイブキハタザオとハクサンハタザオの間での網羅的なゲノム多型解析をおこなった。その結果、全ゲノム領域の0.04%で違いが見られ、繁殖器官である花序への投資量に関係すると考えられる遺伝子を発見することができた。また、上記の遺伝子以外にも、低温耐性・凍結耐性・呼吸量・病原菌耐性に関与すると考えられる遺伝子を多数発見した。次に、これらの遺伝子のDNA塩基配列を解読したところ、ゲノミックマイクロアレイのプローブ(検出配列)が設計されている領域において実際に欠失・挿入・置換等の変異が見られ、それらの変異が機能の違いに関与していると予想された。また、伊吹山のイブキハタザオとハクサンハタザオの複数個体について配列解析を行なったところ、分化はしているものの完全には固定せず、低頻度で維持されている対立遺伝子も数多く見つかった。さらに、これらの遺伝子が藤原岳においても同様にイブキハタザオとハクサンハタザオで分化しているかを、DNA塩基配列を解読することで調査した。その結果、伊吹山では分化していたどの遺伝子も、藤原岳では分化していないことがわかった。このことは、伊吹山と藤原岳のイブキハタザオが異なる遺伝的メカニズムで進化したことを示唆する結果である。
All 2010 2009 2008 2007
All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 5 results) Presentation (3 results)
Population Ecology 51
Pages: 187-195
Journal of Ecology 96
Pages: 1086-1097
Journal of Ecology 96(印刷中)
日本生態学会誌 57
Pages: 71-74
110006277365
Pages: 57-81
110006277366