Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2009: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
多系統的に派生した穿孔性二枚貝のなかで唯一,高い多様性を得た機械的穿孔者・ニオガイ亜目の進化過程を解明するため,古生物学的,解剖学的,分子生物学的な観点から研究を進めた。その結果,(1):系統初期のジュラ紀化石種を詳細に検討して未記載種を記載し,祖先的分類群の一部は少なくともBajocian階までに木材食に適応していたことが明らかとなった。(2):5遺伝子種を用いて内群102種を網羅的に分子系統解析し分岐年代を推定した結果,本亜目は4つの科から構成され,そのうちフナクイムシ科とキクイガイ科は中緯度地域の植物の多様化を背景としてジュラ紀後期までの短期間に一挙に分化して木材食を獲得したことが示された。一方,懸濁物食に適応した系統群の多様化は白亜紀中期に生じ,現在型のプランクトン生態系への海洋変革によって成し遂げられたと推定された。これら懸濁物食に適応した系統群は西太平洋での多様性が最も高く,チテス海ないし北太平洋からの侵入があったことも示唆された。さらに,オオノガイ亜目の殻の非対称性と退化的な蝶番が可能とする前後開閉の自由度を前適応として,機械的な前後開閉運動を進化させて木もしくは岩に進出し,系統初期に特異な形態を得ていたという新たな進化概念が導かれ,これまで一般化されてきた仮説は棄却された。(3):フナクイムシ科とキクイガイ科はそれぞれ浅海と深海での木材食に高度に適応し,前者には種々の生殖的な適応進化が知られるが,キクイガイ科の知見は皆無であった。そこでXylophaga属とXylopholas属を詳細に検討したところ,キクイガイ科で初めて矮雄の存在が確認された。この事実は極端な性的二型の例として二枚貝で初めての発見である。また,キクイガイ科の既知種について水深毎の矮雄保有率を推定したところ,漸深海帯で特に高いことが判明し,矮雄が系統分岐の早い段階で進化した可能性も示された。こうした生殖様式の進化は,深海底での不安定かつ散在的な環境下で本科を著しく適応放散させたひとつの要因だと考えられる。
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