Budget Amount *help |
¥3,300,000 (Direct Cost: ¥3,300,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2008: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
真性粘菌の変形体は単細胞単核のアメーバが多数融合して形成される単細胞多核の巨大アメーバであり,適切な環境下で培養すると数十センチメートルから数メートルにまで成長する.また,変形体の細胞体全体は一定の周期で同調的に振動している.局所的に受容された情報は振動の位相変化として細胞全体に伝播され,それにより走化性応答などの行動が引き起こされる.従って変形体細胞は,脳などと同じく,能動的な素子によって作られる複雑なシステムであるとみなすことができる。近年,変形体のこのような性質を利用して例えば迷路の最短経路解を求めることなどが可能であることが示されており,変形体は集合的知性のモデルとして注目を集めている.筆者は変形体に関する生化学的・細胞生物学的研究を経て,近年は変形体の行動に関する数理的研究を展開すると同時に,「生命であること」を利用した計算系の実装を試み,構成的に生命とは何かを理解することを目指している. 筆者は,変形体細胞が形成するチューブネットワークをグラフ理論的に解析することにより,サブネットワーク同士がトポロジーを共有すること及び,新しいネットワークは過去の運動及びネットワーク形成の履歴に依存して形成されることを発見した.つまり,変形体は細胞体の局所間で交信すると同時に,過去の履歴を参照しつつネットワーク形成を行うことが明らかとなり,細胞システムの適応的行動に関する新たな知見が得られた.また,これらの知見を元に変形体の経路探索に関する数理モデルを構築し,変形体の運動を良く再現することに成功した.
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