Project/Area Number |
07J08981
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Japanese literature
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 温 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2007 – 2008
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2008)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2008: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 近世文学 / 近世思想 / 幕末期の文芸 / 幕末期の政治運動 / 大橋訥庵 / 大橋淡雅 / 書画鑑定 |
Research Abstract |
平成20年度の研究主題「訥庵の著作と勤王活動」を考えるにあたり、その過程で新たに発見された史料『古筆了伴・安西雲煙/鑑定一件始末』がその前提として非常に重要と認められたため、本年度の研究では本史料の検討に重点を置いた。これは訥庵の養父淡雅の後裔にあたる宇都宮市菊池家所蔵の未紹介史料で、幕府のもとで古筆鑑定を専門職として世襲していた古筆家と、民間書画商である安西雲煙とが弘化3年(1846)に書画鑑定における特権をめぐって争った際の裁判の経過を記録した写本である。なお、本史料が菊池家に伝存する理由は当時淡雅と雲煙が書画鑑定を通して懇意であったことによると考えられる。本史料によれば、雲煙は古筆家が書面鑑定において保有する鑑定証の発行独占権を侵害した廉で訴えられているのだが、その供述内容からは雲煙が文人達と書画鑑定の集会を催し、その集会における鑑定行為が追々評価を高めていく中で権威たる古筆家からの警戒を招いたという経過が見えてくる。すなわち、これは先年度の研究において既に指摘している淡雅や雲煙らの書画鑑定サークルの存在と深い関わりを持つと考えられ、ここから淡雅周辺の文人達が書画鑑定界に大きな影響力を持つ存在として認識されていたこと、さらには同時期の江戸において鑑定市場が成立するほどの書画流行の状況があったことがうかがわれ、こうした状況が訥庵が文人として後々顕在化していく大きな前提となったと考えられる。以上の点から本史料は幕末期の文人研究に新たな視点を提示するものと考え、その内容と意義を明治美術学会において「幕末期の書画鑑定における権威の在処-『古筆了伴/安西雲煙鑑定一件始末』を中心に-」として口頭発表するとともに、『超域文化科学紀要』第13号において「『古筆了伴/安西雲煙鑑定一件始末』解題と翻印」として発表した。
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