Project/Area Number |
07J11542
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
ヨーロッパ語系文学
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鳥山 定嗣 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2007
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
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Budget Amount *help |
¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2007: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 詩的言語 / 二元論の克服 / 虚実の境 / 自己 / ナルシス / 代名動詞(再帰的・相互的用法) / 人称代名詞 / 他者 |
Research Abstract |
本研究は、言語というものを、あらゆる二項対立的な図式の温床でありながらまたその克服の場でもあるとみて、とりわけ詩的言語表現に着目し、そこに二元論的思考を乗り越える可能性を探ろうとするものであるが、今年度前期は、詩の定義問題(詩とは何かという根本的問題)に焦点を絞って研究を進めた。ヴァレリーは、詩の定義を、感じられる形式と理解される内容(声と思考ないしは音と意味)の調和に求めるが、この調和自体は定義され得ないとし、定義することもまた否定することもできないその調和が詩の本質をなすという。五月の総会における研究発表では、この定義不可能かつ否定不可能といわれるものを、虚と実のあわいにあるものと捉え、「虚実の境」という観点から、「ナルシス」という主題を要に、ヴァレリーにおける「詩」と「自己」という互いに隔たった二つの観念を類比的に捉え直して検討した。口頭で発表したものが、査読を経て、十月には論文の形で公表される予定である。 なにより言語表現に目を向ける本研究において、「ナルシス」の主題がひときわ興味深いのは、フランス語の代名動詞の諸用法(再帰的、相互的、受動的)について再考を促すという点である。水鏡に映る自身の像と向かい合い、己が水影に二人称で呼びかけるナルシスにとって、代名動詞の再帰的用法と相互的用法とは不可分にして一である。具体的に言えば、自分が自分を見るという行為と互いに見つめ合うという行為がわかちがたく交錯する。同様に、独り言と対話の境界線はゆらぎ、自己愛と他者愛は絡み合う。つまり、自己の内的関係と自他の外的関係とが不可分な形で重層するのである。このように、代名動詞の再帰的用法と相互的用法とを分けて考えるのではなく、その重なるところをみる見方は、自己愛に溺れて水仙と化すナルシスという一般的理解の遥か彼方で、自己と他者を重層的に捉えなおす視点を提示するものとして重要であると思う。
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