Research Abstract |
オクラホマ大学のCAPSで開発された非静力学大気モデルARPS(Advanced Regional Prediction System)を用い,福岡都市圏における海風の侵入を再現した.都市の影響を検討するため,計算条件の中で,土地被覆のパラメーター粗度z_0(m),および都市域の面積を変化させることにより,過去の都市,現在の都市,より拡大した将来の都市を想定した.過去,現在,将来の海風侵入時刻はそれぞれ1100JST,1045JST,1030JSTであった.内陸への侵入は過去が最も早く,現在と将来はほぼ同程度であった.過去では,粗度が小さいため海風が陸域を早く吹き抜けると考えられる.また将来では,粗度が大きいため海風が陸域を吹き抜ける時間は長くなると考えられるが,一方で都市域の面積を広げたことにより都市が高温化したために海風が強くなり,現在とほぼ同程度になったと推測される.過去では海風前線はほぼ直線なのに対し,現在,将来では中央部の侵入が遅れ前線が蛇行する.また,高度20mにおける陸上での海風の水平風速は,過去,現在,将来の順に小さくなり,粗度が大きくなるほど,水平風速が小さくなることが分かった.次に,ワークステーションHPC3000-XC104Tを導入し,気象モデルWRF(The Weather Research and Forecast)を用いた数値シミュレーションを試みた.WRFは,米国大気環境センター(NCAR),米国国立環境予測センター(NCEP)が共同開発した次世代型気象モデルであり,多くの気象学者がこのモデルを用いたシミュレーションを始めている.著者は,玄界灘での海風の発生の再現を試みており,ほぼ再現できている.しかし,細かい部分での再現性が落ちる場合があり,今後の課題は,この計算精度を上げ,ヒートアイランド現象および海風の相互影響を検討し,定量的な評価を試みることである.
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