Research Abstract |
本研究は,長大斜張橋ケーブルに生じる空力振動現象に対して有効な制振機構を開発することを目的とし,2次元ならびに3次元ケーブル模型を用いた動的応答計測,ならびに実橋ケーブルの振動応答観測データに対して数値解析処理を施し,その応答挙動に検討を加えるものである. 本研究は,平成8年度単年度で実施された.その成果は概要は以下のようである. 1)実橋ケーブルの振動応答加速度測定記録をウェーブレット解析し,加速度計測点における観測波形の周波数解析とともにそれらの時間軸上の変動を明らかにした.これにより,ケーブルの振動挙動は複数の振動モードの重ね合わせにより生じていること,各モードの固有振動数に対応した風速域限定型振動であること,および卓越周波数成分に時間軸方向のうねりが見られ,複数モードの重ね合わせによるビ-ト現象によるものであることが明らかとなった。 2)3次元ケーブル弾性模型を用い,以上の現象を風洞内に再現することに成功すると共に,傾斜ケーブル後流の流速変動,およびケーブル本体に作用する非定常揚力をウェーブレット解析した結果,カルマン渦成分よりは低周波数に卓越成分が確認され,風速限定型振動と対応することが明らかとなった.さらに,ケーブル背後の軸方向流が強くなると後流の低周波成分が強められ,両者に相関が認められた. 3):ケーブル制振に必要なスクルートン数(質量と対数構造減衰率の積を空気密度,断面代表長(直径)の2乗で無次元化したもの)は120以上であことが明らかとなり,従来言われている構造減衰では制振に必ずしも十分でない可能性が指摘された. 4)ケーブル表面のディンプル設置は空力制振対策としては十分でないことが示された. 5)軸平行突起の設置は,制振効果が期待できること,さらに,楕円突起設置はケーブル制振に十分な効果を発揮することが確認された.
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