Project/Area Number |
08620060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Research Field |
Politics
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
渡辺 和行 香川大学, 法学部, 教授 (10167108)
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Project Period (FY) |
1996
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1996: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | ヴィシ-体制 / 対独協力 / 人道に反する罪 / 第二次世界大戦 / モ-リス・パポン / ポール・トゥヴィエ / ナチス・ドイツ |
Research Abstract |
1996年のフランスも、戦争の記憶の問題に直面した。1月にはヴィシ-政府との関与を疑われたミッテラン前大統領が他界し、7月にはフランス人として初めて「人道に反する罪」に問われて終身刑に服していたポール・トゥヴィエが病死した。このように、当時を知る人々が鬼籍に入って身体的記憶が薄れるにつれて、国民的記憶を曖昧にする動きも加速したのである。 それでは、ヴィシ-の集合的記憶はいかに変容したのであろうか。ヴィシ-期の集合的記憶は、4段階(1994-54年の服喪期、1954-71年の抑圧期、1971-3年の脱神話期、1974年以降の脅迫観念期)を経て変化してきた。第I期は、法的忘却を意味する大赦が可決された時期であり、第2期は、抑圧された記憶の補償作用としてレジスタンス神話が最盛期を迎えた時期でもあり、1964年のジャン・ム-ランのパンテオン移葬がその頂点をなした。レジスタンス神話を代表したドゴールが死去した翌年の1971年に、ヴィシ-像の転機が訪れた。この年は対独協力のフランスを描いた映画が上映され、ユダヤ人を殺害した民兵団のトゥヴィエに特赦が与えられた年でもあった。こうしてヴィシ-政府によるユダヤ人迫害問題が注目を集め、脅迫観念と化す第4期を迎える。 近年の戦争の記憶がユダヤ人問題と関わるのも、以上のような「ヴィシ-症候群」によるのである。1997年1月には、ヴィシ-時代のジロンド県の高官で1970年代には予算大臣を務めたこともあるモ-リス・パポンが、1600人ほどのユダヤ人を収容所に送った咎により、「人道に反する罪」の共犯として裁判に付されることが決定されたばかりである。同時進行的なパポン事件の訴追に至る経緯を中心に、1996年のフランス社会における「ヴィシ-症候群」の諸相を、ドイツの歴史家論争との比較も交えて吟味検討したのが、私の科研研究である。日本にとっても裨益するところが大きい。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)