Research Abstract |
1)合成 ピリジン誘導体をターミナル配位子(L)としてもつオキソアセタト架橋三ルテニウム錯体[Ru_3(m_3-O)(m-CH_3COO)_6(L)_3](以下RU(L)_3と略記)およびピラジン(pz)架橋2量体に4-ピリジルトリフェニルポルフィン(MP,M=H_2,Zn)や一酸化窒素を導入した2,3中心錯体12種を合成し,高速液体クロマトグラフなどを用いて,PF_6^-塩として単離,確認した.[RU(NO)L(pz)]^+(L=py(1),L=cpy(2)),[NO(L_1)RU(PZ)RU(L_2)L_3]^<n+>(L_1=L_2=Py,L_3=CO,n=1(3),L_1=Py,L_2=cpy,L_3=CO,n=1(4),L_1=L_2=L_3=py,n=2(5),L_1=L_2=py,L_3=dmap,n=2(6)),[RU(MP)L_1(L_2)]^+(M=Zn,L_1=L_2=py(7),M=H_2,L_1=py,L_2=dmap(8)),[MP(L_1)RU(pz)RU(L_2)L_3]^<2+>(M=Zn,L_1=py,L_2=L_3=cpy(9),M=Zn,L_1=py,L_2=L_3=dmap(10),M=Zn,L_1=L_2=py,L_3=NO(11),M=H_2,L_1=dmap,L_2=cpy,L_3=NO(12))ただし,py=ピリジン,cpy=4-シアニピリジン,dmap=4-ジメチルアミノピリジン. 2)電気化学測定 すべての錯体について,サイクリックボルタモグラムを測定し,各部位の酸化還元過程と電位を特定した.錯体3〜6,11,12からニトロシル配位子(NO^+)のp電子求引性の効果はこれが配位した核内に留まり,隣りの核へはpzを越えてほとんど及ばないことが判明した.これは電位傾斜形成には有利であると結論した.錯体9〜12にMPからの光電子移動が期待しうる酸化還元電位勾配がNOの有無にかかわらず構築されていることが確認された.9と10で電子受容体であるRU2量体中に逆向きの勾配のあることも明らかになった. 3)光化学実験 二中心錯体7,三中心錯体9,10の蛍光寿命t_Fを測定したところ,ZnPのt_Fが1.7nsであるのに対して7では454fs,9,10ではそれぞれ402,374fsと非常に速いこと,さらに顕著な溶媒効果があることから,光合成系に見られるような連鎖型電子移動に固有な非平衡電子移動が起こっている可能性が示唆された.光電子移動にカップルしたNOの還元脱離は,現段階では見出せなかった.NOを導入した二中心錯体の合成,三中心錯体の中央の三核骨格の電位をより負にして,より大きな傾斜を形成する必要があることがわかった.
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