Research Abstract |
Actinomyces naeslundii(A.naeslundii)の,ヒトの歯肉溝の内面への吸着現象の一面を,in vitroにおいて検討した。すなわち,申請時においては,本研究によってA.naeslundiiの歯根面および歯肉溝上皮の表面両面への吸着の機序を検討しようと企画していた。しかし,予期せぬしかし看過できぬ発見があったため,これに伴い研究が当初とは多少異なった方向に発展した。このため報告時点においては,提出した研究実施計画の一部であるA.naeslundiiの歯根面への吸着現象の解析に止まっている。 今回の検討において,歯根面の代替としてhydroxyapatite beads(HA)の表面を,また,ヒト歯肉溝滲出液の代替としてヒト血清を採用する計画を立てた。そこでまず,HAの表面に吸着する血清蛋白質を回収し,それの分離精製を行った。しかし,この時点で,自らの実験系に採用したHA,すなわち,永らく研究者達の間で繁用されてきた定番のHA標品がHAとは異なったリン酸カルシウムの結晶である可能性が示唆された。これに伴い,結晶構造が異なることによって結晶表面に形成される蛋白質の被膜を構成する蛋白質の組成が異なってしまう可能性およびそれへのA.naeslundiiの吸着態度が変化してしまう可能性が懸念された。そこで,件のHA標品の結晶解析を行い,それがHAではないことを確認した後、回収蛋白質の組成を典型的なHA上に形成させた被膜のそれと比較して,両者が大きく異なっていることを発見した。また,両被膜へのA.naeslundiiの吸着態度も異なっていることを知った。以上の知見の一部は,第38回歯科基礎医学会において発表した。さらに,これらに新しい知見を加え,第75回IADRにおいて発表する予定である。また,これらの内容は,本年中に国際医学雑誌へ投稿されるべくまとめられ,その原稿が現在執筆中となっている。 今後は,回収蛋白質の中でのA.naeslundiiの吸着を起こす画分を特定し,その画分を用いて形成させた典型的なHA上に形成された被膜へのA.naeslundiiの吸着吸着現象を検討し,併せて,歯肉溝上皮の表面上の蛋白質被膜に対するA.naeslundiiの吸着吸着現象を検討していくつもりである。
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