Project/Area Number |
08710024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
美学(含芸術諸学)
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
上村 博 京都造形芸術大学, 芸術学部, 講師 (20232796)
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Project Period (FY) |
1996
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1996: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 情感 / 記憶 / 知覚 / テーヌ / リボ- / 感性 |
Research Abstract |
本発明は当初もっぱら19世紀思想に関するものとの予想から出発したが、研究を進めて行くにつれ、「情感的記憶」の問題が、西欧思想史に古くから底流として存在し続けてきたことが明らかとなった。それは神と人間と自然の関係の問題にもかかわってくる。「人間」という形容のついた存在は、とりわけ、受動的であると同時に能動的な存在であるため、人間精神の位置も神と相対的に貶められたり、神に似たものとして評価されもする。そのとき、人間精神は、もっぱら知性として、幾何学的な認識能力により特徴づけられもするが、それと同時に感性によっても性格づけられる。感性と知性とは、後者が神的なもので、前者が人間的なものとされてきたわけではない。感性のうちにも何らかの神的なものが認められ、外的感覚に対して深い内面的感情が肯定されていく。また知性の方も時代を経るにしたがって、次第に即自的価値を失い、中立的なものとなっていく。19世紀に西欧(ドイツ語圏を含む)で「情感的記憶」の問題が再び浮上してくるのは、こうした感性の内部での価値の序列化と明証的知性の価値の範疇からの除外(ただし意志的判断という形では積極的な意義を与えられ続ける)にともなって、「情感」や「情感的記憶」の持つ自律的な法則性、力などが注目されたことに由来する。これはルソーやロマン主義の著作家にあきらかに見ることができる。しかし、テーヌに代表される19世紀フランスの研究者たちは、知性の「情感」依存性を説こうとして、かえって方法論的には「情感」の自立性を抛棄してしまう。彼らは情感や記憶を同時的なものとしてのみ考え、その時間性はあくまで知性的なモデルにしたがっていたからである。ただし、当時の心霊研究などにも見られるこの矛盾は、20世紀の新たな哲学に恰好の課題を提供することになった。
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