Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究は,後進性や封建性が強調されてきた山陰農村,なかでも岩見地方を対象地域に選んで,近世地主制の形成過程の特質を解明しようとするものである.中国地方では,瀬戸内海に面して農民的小商品生産の先進地域が広がり,近世地主制の高度な発展がみられた.しかし農民的小商品生産の発展が鈍く,後進的と称される地域においても,小作地率が高い場所が広くみられる.近代に至っても後進性や封建性が問題とされ続けた日本海側の山陰農村,とくに岩見地方で近世後期に他の地主制の圧倒的発展が確認できるのである.農民的小商品生産の展開を基盤とすれば,こうした地主制の早期形成は,どのような要因に基づくものであろうか.この疑問に関して示唆的なのは,岩見地方が農地改革以前の特殊小作慣行として有名な「株小作制度」の強固な残存地帯であった点であろう.農民的小商品生産の後進地域における地主制の早期形成と「株小作制度」の関連はどのようなものであろうか.農民的小商品生産に基づかないとすれば,「株小作制度」の存在こそが,地主制の形成に決定的な意味を持ったのではないだろうか.本研究では岩見地方の邇摩郡を中心に資料収集を行った.資料の内容に基づき,「株小作制度」の存在形態を,農民経営・農民層分解・地主経営等の実態と関連づける分析作業を通じて,後進山間地帯における地主制形成のメカニズムを検証中である.
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