Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
ヒト精嚢は前立腺に比較して、感染症が極めて少ない臓器であることを臨床的に経験しているが、その原因については現在不明である。精嚢より分泌される主要蛋白である精子運動抑制因子(seminal plasma sperm motility inhibitor;以下SPMI)はIwamotoらが1988年ヒト及びブタ精漿中からその分離に成功したものである。このSPMIが各種細菌に対して増殖抑制効果を有するのかを今回ブタSPMIを用いて検討した。黄色ブドウ球菌(MSSA及びMRSA),腸球菌,大腸菌を各種濃度(0,100,1000,5000,10000μg/ml)のSPMI添加トリプチケースソイ培地に接種,培養し経時的(0,2,4,6時間)に光電比色計にて吸光度(OD)を測定した。またこの時寒天平板法により培地中の生菌数も測定した。OD測定の結果、腸球菌では菌接種6時間後に無添加群ではOD0.54を示したのに対し10000μg/ml添加群ではOD0.06であり、この時の生菌数は無添加群では9.70×10^9CFU/mlであったのに対し10000μg/ml添加群では5.92×10^5CFU/mlと著明な増殖抑制効果が認められた。他の菌種に関してもほぼ同様な結果が認められた。以上の結果より、各種細菌に対してブタSPMIは濃度依存性に増殖抑制効果を示すことが明らかになり、精嚢において各種微生物による感染症が少ないことに、SPMIの細菌増殖抑制効果が少なからず寄与していることが示唆された。現在、このメカニズムを解明するために、SPMIを作用させた細菌の形態学的変化を電子顕微鏡を用いて観察している。その結果、SPMIが大腸菌や黄色ブドウ球菌の膜に付着し、その膜を破壊する像が観察されており、今後この点について他の細菌を含めさらに詳細に検討し、SPMIの細菌増殖抑制効果のメカニズムを探ってゆく予定である。
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